食・料理
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いちじくは約300~400年前に中国から薬用の木として渡来したフルーツだ。食べるとプチプチとした食感が楽しめるのが特徴のひとつ。ケーキやコンポート、マリネ、シャーベット、和え物、天ぷらなど、さまざまな調理方法で味わえるが、食べるとアレルギーの症状が出る可能性があるようだ。
いちじくは独特の形がかわいらしく、漢字で無花果と書く果物だ。選び方のポイントはふっくらと大きくて果皮に弾力やハリがあり、皮にキズがないものを選ぶこと。全体が色づいており、おしりが開いているものが食べ頃だ。そのまま食べるのはもちろん、コンポートやジャム、生ハム巻きにしても美味しい。ただし、いちじくを食べるとアレルギーの症状が出る可能性があるといわれている。では、どういった人がアレルギー症状が出てしまうのだろうか。
新鮮な野菜やいちじくのような果物を食べた直後に唇が腫れ、口の中と喉がイガイガする症状を感じる人がいるようだ。そういった症状は口腔アレルギー症候群の可能性がある。口腔アレルギー症候群の特徴はシラカバを中心とした花粉症の患者に多くみられるところだ。なんとなくシラカバと野菜や果物が関係ないように感じる人もいるだろう(※1)。
花粉のアレルギーの原因物質であるアレルゲンと野菜や果物の食物アレルゲンは共通の分子構造が存在しており、その抗原分子によって症状を引き起こすと考えられている。とくに成人や年長児は、最初にシラカバの花粉症を発症した後で口腔アレルギー症候群を発症するケースが多い。一方の年少児は原因になりやすい食物をたくさん食べると口腔アレルギー症候群になりやすいという(※1)。
皆さんはラテックスアレルギーという言葉を耳にしたことがあるだろうか。ここではラテックスアレルギーの特徴といちじくの関係性を紹介しよう。
ラテックスアレルギーとは、天然ゴムが原因のアレルギーだ。このラテックスアレルギーがあると、ラテックス入りの手術用の手袋や台所で使用する手袋が皮膚にふれただけで、発赤・かゆみ・腫脹といった軽度な症状を起こすことがある。重篤な場合は急激な血圧低下をともなうショック症状を起こすことがある。さらに歯科医院で口をさわられた瞬間にショックを起こすことや、救急外来で運ばれて手袋をはめた手でさわられた瞬間に血圧が低下することがある(※2)。
ラテックスの入った製品は歯科医がはめる手袋や一般的な手術用手袋、注射液のゴムキャップ、点滴の管の一部、麻酔のマスクのように医療現場にたくさんある。ラテックスアレルギーの人は、一部の食べ物に注意が必要だ。ラテックスアレルギーがある人は、いちじく・バナナ・キウイ・栗・メロンのような果物を食べると口腔アレルギー症候群に似たような症状を起こすことがある。この症状がラテックス・フルーツ症候群だ。(※2、3)
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最後にいちじくのアレルギーが生じた際の対処法を紹介しよう。
食物アレルギーは子どもに多くみられ、年齢が大きくなるにつれて少なくなる病気だ。年齢とともに受診数は減るが、20歳以上の成人で4.7%の人に症状がみられた。成人の食物アレルギー患者が全体を占める割合は小さいようだが、相当多数存在するであろうと考えられる(※4)。とくに口腔アレルギー症候群の診断は、症状があらわれる直前に食べた食物で原因を探し出す。ただし野菜や果物の抗原は加熱調理や加工で失活することがあり、わかりづらいことが多いため注意が必要だ。また、プリックテストと呼ぶアレルギー検査と血液検査が有効な場合もある(※1)。
口腔アレルギー症候群の治療は原因になりやすい、いちじくのような食べ物を避けることだ。症状が出ているのに食べ続けると、重症化する可能性がある。いちじくのような特定の食物で発症すると、同じグループの食べ物も口腔アレルギーを起こす可能性がある。ただし実際に症状があらわれる食べ物以外は原則として制限する必要はない。新鮮な野菜や果物で症状が出る場合は、加熱や加工によって摂取可能になるケースもある(※1)。
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いちじくを安全に食べたいが、アレルギーがあらわれる可能性があることを理解してもらえただろうか。紹介したように、とくにシラカバの花粉症の人がアレルギー症状が出やすいようだ。いちじくが好きで食べたくても、花粉症の人はアレルギーに注意してもらいたい。
(参考文献)
※1出典:中野区医師会「口腔アレルギー症候群」
https://www.nakano-med.or.jp/topics/2013/03.php
※2出典:医療法人社団くまいクリニック「ラテックス・フルーツアレルギーについて」
http://kumai-clinic.or.jp/html/colum/arerugi/colum49.html
※3出典:奈良県医師会「口腔アレルギー症候群」
https://nara.med.or.jp/for_residents/6134/
※4出典:公益財団法人ニッポンハム食の未来財団「食物アレルギーとは」
https://www.miraizaidan.or.jp/allergy/about.html